意匠なんて考えてもみませんでした!

その女性のお客様、出会ったのは弁理士会の無料相談でした。相談の内容は、自分で作成して出願した特許出願に対する拒絶理由が通知されたので、どうすればいいのか、という相談でした。

結論からいえば、最初の明細書の質が低すぎて対処のしようがない相談でした。良くあることなんです。素人の作成した明細書の場合には。しかも、1週間前にも同じ相談に申し込んで他の先生に聞いたそうです。そのときの答えは「問題外です」という実に素気ないものだったそうです。あきらめきれずに、今一度、という思いだったんですね。

 

詳しくは書けませんが、星座盤のような発明でした。便利は便利だったんです。

そこで私、表のデザインに着目して意匠登録出願への変更を提案しました。しかし、ほとんどの弁理士は、この選択を否定するでしょう。なぜなら、特許出願の明細書に意匠登録出願に必要な六面図を添付していない場合、意匠を特定することができないとして、特許庁が変更出願を認めない、というのが実務上の常識だからです。

しかし、星座盤を考えればわかりますが、表のデザイン以外は意味のない製品ですよね。特殊な場合として対応できるかもしれない。そう、考えたんです。より確実性を上げるには・・・。そこで、代理人として私の名前を出さずに、特許庁の審査官への相談という形でのシナリオを作ってあげて、この通りに演じてみては?と提案しました。

 

審査官だって人間です。まして、素人が一生懸命に頑張っている(特に女性が)場合には、結構認めてくれることがあるのです。下手に代理人がついていると「あなた、プロなんでしょ?」って即座に否定されますけど(笑)。

この場合、大阪の方っていいですよね。忠実にシナリオを再現してくれました。それも本人が楽しんで演技しながら(笑)。おかげで、新たに六面図を作成して意匠登録出願に変更することを特許庁が認めてくれました。おかげで、3つも意匠権が取れ、模倣されることなく商売をすることができています。

 

「意匠なんて考えてもみませんでした。おかげで安心して売れます!」

 

私は、こういうのがプロに相談する価値だと信じています。状況判断、そして適切な戦術があれば、不可能と思われることでさえ可能になる。法の条文にしばられている専門家ではまずできることではないでしょう。これが私の「強み」です。
 
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